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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで1日前】

2010年10月15日
熊野
吉野熊野国立公園  ~シギのくちばしからみる多様性~

 皆さんは鳥のくちばしを思い浮かべて下さいと言われたら、どんな形を連想されますか。ワシやタカなど猛禽類の鋭いくちばし、カモ類などの幅広いくちばし、スズメなどの小さなくちばし等々・・・ 
 様々ある中で、今回は海辺で観察されるシギ類のくちばしに着目したいと思います。

 下の写真は熊野地域の海岸近くに飛来するシギ類の野鳥達です。


左)シギ科 オオソリハシシギ
右)シギ科 チュウシャクシギ

左)シギ科 キアシシギ
右)シギ科 キョウジョシギ

 海辺で採餌するシギ類のくちばしが、狩りと呼ばれる採餌を行う猛禽類と異なることは、想像に難くないと思います。しかし上の写真の様に同様の環境で採餌するシギ科の中においても、種によってくちばしが大きく異なります。
 
 オオソリハシシギのくちばしは、長く、上に反っています。一方チュウシャクシギは内側に大きく湾曲しています。このくちばしを砂浜などに奥深く突っ込んで、カニや貝などを採餌します。
 キアシシギのくちばしは前の2種よりも短く、同じ砂浜や磯場で採餌し、より浅い場所にいるゴカイ等の生き物を餌にします。
 キョウジョシギは太いくちばしで、磯辺の石ころをひっくり返して餌を見つけます。カタカタとひっきりなしに音を立てながら探します。
 
 シギ類の多くは、シベリアなどの北方で繁殖し、東南アジアなどの南方で越冬します。その中継地として春と秋に日本へ立ち寄ります。その期間、干潮時の砂浜や磯場が採餌場になるので、他種と競合する確率が大きくなります。このため各々の種の採餌方法や採餌場所が重複しないように、くちばしを多様に変化させて進化してきたものと考えられます。
 
 生き物を見つめると、それぞれの種が様々な環境に適応することで巧みに共存していることに気づきます。私たちも地球上の生き物の一員として、長い進化の歴史の中で作り上げられてきた生物多様性を壊すことがないよう歩んでいきたいものです。