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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで100日前】

2010年07月09日
吉野
~吉野熊野国立公園の掃除屋・ルリセンチコガネ~ 

 皆さん、こんにちは。
 今年の秋、愛知県名古屋市で第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)が開催されます。明日は、そのCOP10開催100日前!!ということで、私の大好きな昆虫を題材に「生物多様性」についてお伝えします。

 下の写真は、吉野熊野国立公園でよく見かけるルリセンチコガネです。皆さんは、ルリセンチコガネが何を食べているかご存じですか?


(成虫の大きさは14㎜~22㎜)

 答えは、ニホンジカやカモシカなど(たまに人間のも・・・)の「糞」なのです!
 こんな綺麗な色からは想像できないものを食べています。成虫は腐ったキノコや動物の死骸なども食べますが、幼虫は糞のみを食べて成長します。糞を食べるこの昆虫がいるおかげで、森の中が「見渡す限り糞だらけ」にならないのです。逆に言うと、ニホンジカやカモシカがいて糞をしてもらわなくては、ルリセンチコガネは生息できないのです。そして、ニホンジカやカモシカが生きるためには、木の葉や草など食べ物が豊富になくてはなりません。


ルリセンチコガネの食料を生産中(?)のニホンジカ

 このように生き物は、他の生物と関わり合いながら生きています。  
 このつながりのどこかが絶滅などで途切れてしまったり、ある種が急激に増えたり減ったりすると、生態系のバランスが崩れてしまいます。

 

(左上:青色、右上:緑色、下:青色で縁が緑)

 また上の写真の様に、同じルリセンチコガネでも、個体ごとにわずかに違いがあります。自分と全く同じ人がいないのと同じです。
 これが遺伝子の多様性です。

 ルリセンチコガネの種名は、「オオセンチコガネ」と言います。オオセンチコガネは全国に分布し、赤色(紫色)や緑色、青色という具合に様々な色をしています。日本全国どこを探しても、青色の個体ばかりの地域は、奈良県南部を含む紀伊半島の限られた地域だけです。この地域で見られる青色のオオセンチコガネをルリセンチコガネと呼んでいるのです。
 このように、地域によって固有の遺伝子の多様性も見られます。

   
 昆虫は、皆さんの周りのどこででも観察できるのが魅力の一つです。この小さな住人たちを探し、何を食べているか、どこに卵を生んでいるか、天敵はどんな生き物か・・・探ってみてはいかがでしょうか。ぜひ、この小さな住人たちに目を向け、皆さんの五感を使って生物多様性を実感していただきたいと思います!