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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

自然再生の取り組み【その他】

2010年06月16日
吉野
 大台ヶ原では、数が増えすぎたシカの食害による森の衰退が叫ばれています。しかしそれが一体どれほどのものなのか、なかなか自分の目で見ることはできません。
 増えすぎたシカは、森にどれほどの影響を与えているのでしょうか?

 大台ヶ原には、シカから守りたい植生がある場所などを中心に、防鹿柵(ぼうろくさく)と呼ばれる柵を設置しています。周辺をぐるりと囲まれた植物たちは、シカに食べられず、踏まれず、人間にも踏み荒らされない、保護された状態となります。


図:防鹿柵の図

 ここで問題!

シカは柵の中に入ることができません。この状態をしばらく続けてみることにしました。さて柵の内と外で、どのような変化が現れるでしょうか?

 こたえ


写真:柵の内と外の比較

 柵の内側と外側で、面白いほどくっきりと緑の境界線ができています。シカがいない状態(内)と、いすぎる状態(外)とではこのような差が現れるのですね。
 この柵は、大木が倒れた跡を囲ったもので、日当たりの良いこの場所には、ブナやミズナラを始め色々な種類の植物が育っています。


写真:柵の内側の様子。若い木々が目立ちます。

 シカの影響をなくすと森はどのように戻っていくのか?という問いの答えが出るのは、まだまだ先のことのようです。
 現在は、このような取り組みが始まって数年くらいの初期段階のことが、ようやく分かり始めてきたところです。自然を知るには本当に長い時間が必要なのですね。