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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

春の訪れ 【植物】

2010年04月01日
吉野
 皆さん、こんにちは。
最近、吉野は少しずつ春に向かっているように感じます。夜はまだ肌寒いですが・・・皆さんのお住まいの地域ではどうでしょうか。

さて今回は4月ということで、春の訪れを実感させてくれる植物のご紹介をしたいと思います。
春に道端で目を引く植物といえば・・・スミレです。

写真:タチツボスミレ(スミレ科:4月1日撮影)

 皆さんはスミレの花が道路脇やコンクリートの亀裂からよく顔を覗かせているのをご覧になったことがあるかと思います。では、なぜこの様な場所に生えているかご存じでしょうか?
これは、スミレの種子に秘密があります。スミレは、種子に「エライオソーム」という物質を付けています。「エライオソーム」は、アリの好物です。アリは、落ちているスミレの種子を見つけると、「エライオソーム」を食べるために巣へと持ち帰ります。そして、巣の中で「エライオソーム」を食べ、種子を捨てるのです。捨てられた種子はアリの巣の近くで芽を出します。アリの巣は、道路脇のアスファルトの隙間やコンクリートの亀裂を利用して作られていることがよくあり、そのため、スミレは道路脇やコンクリートの亀裂でよく見かけるのです。アリは好物の「エライオソーム」を食べることができ、スミレはより遠くに種子を運んでもらうことができるお互いにオイシイ思いができる関係にあるのです。

 吉野熊野国立公園にある弥山(みせん)という山の頂上付近でも、とても小さく、可愛らしいスミレの一種を見ることができます。スミレはとても種類が多く、細かく分類すると、日本だけで300種もあると言われており、スミレだけを扱った図鑑があるほどです。

写真:弥山山頂付近で咲くスミレの一種(2009年5月14日撮影)

 以前の日記でもご紹介(※)したように、私たちが何気なく見ている生き物たちは、それぞれが深く関わりを持ちながら生活しているのです。皆さんも視点を変えていろいろな生き物を見てみてはいかがでしょうか。その生き物の思わぬ生き様が見えてくるかもしれません。
(※)2009年7月24日 「アリと植物 【動物】【植物】」をご参照下さい。
http://kinki.env.go.jp/blog/2009/07/24/index.html