吉野熊野国立公園 田辺管理官事務所の戸口です。
紀伊半島では、田植えはGWあたりから始まり、田植え前線は北上していきます。そろそろ和歌山県全域に広がる頃です。
苗が整列する水田 | 水田に映る山と特急くろしお号 |
近畿エリアは梅雨に入り、ホタルの乱舞が見られ始めています。
「梅雨」とは故事にちなんだ雨の名前なのだそうです。室町時代に京都の賀茂別雷神社(現在の上賀茂神社)の例祭に、後奈良天皇が梅の実を奉納し祈願したところ、雷と共に雨が降り始め、干害に苦しんでいた人々に五穀豊穰をもたらしたことから、人々の間でこの雨を「梅雨」と呼んだことが語源となるそうです。今では「6月6日は梅の日」と認定されています(紀州梅の会が申請、日本記念日協会が認定:2006年)。
田辺管内でも梅の実が大きくなり、きれいに紅をさして収穫時期を迎えています。
紅をさしてきた南高梅 | 梅の日ポスター |
さて、少々前置きが長くなりましたが、今回は公園内での出来事で思いがけず感激したことについてお伝えしたいと思います。
JRきのくに線では、一部、海の間際を通過する場所があります。通勤の一部でその区間を通過する際は、毎日異なる海の色を見せてくれる車窓からの景色を堪能しています。
車窓からの風景(この写真は休日に撮影) |
中でもみなべ町以南の沿岸部は吉野熊野国立公園に指定されています。
"ながら巡視"として、いつも海岸をチェックしていますが、5月下旬のある日、公園の北端にあたるみなべ町のとある海岸で、川沿いにキャタピラーのような何かの跡がついているのを発見しました。内陸から小さな川が海へ流れ込んでいる砂浜の部分です。
目に止まった未確認ライン(跡) |
同じ町内にある千里の浜は、本州一のアカウミガメの産卵場であることから、1番に「ウミガメの足跡では!?」と思いましたが、直後に「そんな訳がない」と思い直しました。その跡が川から砂浜に上がり、また川に入るような軌跡を描いていたからです。
ウミガメは海水の生き物ですから、淡水が流れ込むようなところには好んで行かないであろうことが推察されたためです。
小型バギーが通った跡などかもしれないと思い直していました。
その後も、車窓からは毎日その跡が見えていました。毎日、目にしているとやはり気になり、発見から3日後に直接現地へ巡視に行ってきました。
近くから見た様子 |
私は昔、石垣島でウミガメの産卵上陸の跡というものを一度だけ見たことがありましたが、今回見た跡については確証を持てずにいました。
その中で、丸で囲った部分が何なのか気にもなりました。そこで、みなべ町千里の浜でアカウミガメ調査をされている詳しい方や有識者に写真を添えて確認していただいたところ...
なんと、「間違いなくアカウミガメの上陸跡である!」との返答でした!しかもこの場所では今年初確認であるとのこと!!
産卵のため上陸中、または産卵中のウミガメの様子を観察したことがない私は、思いがけない発見をしたことに大変感激し、かなりテンションがあがりました。
ちなみに、私が気になった丸で囲った部分は、産卵しようとして穴掘りをチャレンジした跡なのだそうです。もし産卵しているとしたら、こんなに分かりやすい跡は残さず、カモフラージュされて分かりにくくなっているそうです。
チャレンジ跡 |
その後、毎日、車窓から新たな足跡を探しています。
個体によっては100kgもある巨体を引きずり、浮力からはなれて上陸し産卵するという不思議な生態をもつウミガメ。知れば知るほど興味は尽きることがありません。
新たに見つけたウミガメ上陸の跡 |
いろいろな要因が考えられるようですが、みなべ町では近年、ウミガメの産卵数に大幅な減少傾向が見られます。
ウミガメの産卵は夜間に行われます。人が夜の浜を歩き回ったり、懐中電灯を使ったりすると、上陸をやめ、卵を産み落とす前に海に帰ってしまいます。ウミガメ保護のため、産卵期から子ガメが海へ旅立つ期間である5月から10月頃までは、夜間の浜での活動はお控えいただきますよう、ご協力をお願いいたします。
※みなべ町千里の浜は、全域が通年で乗入れ規制区域となっております。車両やバイクはもちろん、船舶の上陸も規制の対象となりますので、ご注意ください。
また別の機会には、ウミガメを通して環境問題に触れたいと思います。
お楽しみに♫
]]>田辺管理官事務所の戸口です。
この時期、山々には白い花を付けた木をよく目にします。中でも和歌山の里山では、時折、ミカンの花の甘い香りが漂うことがあります。さすが和歌山、収穫量日本一(18年連続)です。
また、沿道ではアジサイの花が色づいてきています。
甘い香りがするミカンの花 | 色鮮やかなアジサイ |
先日、みなべ町教育委員会の企画で、山手に住む子どもたちに海の生き物に触れてもらう機会として、地元漁協協力のもと、ヒラメの放流体験が実施されました。その際に、田辺管理官事務所からは海のお話をさせていただきました。
はじめに、この日、放流するヒラメについて、漁協の方からお話がありました。
漁協の方のお話を聞いている園児 |
今回、放流するヒラメは、(県栽培漁業センターから漁協に提供されたもので、)4月当初は3.5cm程度でしたが、漁協の水槽でエサをやり、約2ヶ月かけて育て、今では3万4000尾のヒラメが約8cm以上に成長しているとのことです。
(このサイズになってから海へ放流することで、海での生存率が上がり、ヒラメの漁獲高をあげることができるということも、後に漁協の方から伺いました。)
放流するヒラメの稚魚 |
漁協の方は、「ヒラメは海へ放してあげたあと、自分の力で餌を摂らないといけません。餌を探すことを頑張れるように、放流前にお腹いっぱいにして力をつけてあげましょう」とのお話をされ、子どもたちは、2班に分かれ、1班ずつ水槽で泳いでいるヒラメに餌やりをしました。
餌やりの様子 |
その間、もう一班の子どもたちに、私から海のお話を紙芝居で紹介しました。
物語は、『魚と僕たちは繋がっている』というもので、「食物連鎖」のお話と「海をきれいにしよう!」という内容です。
子どもたちは一生懸命お話を聞いてくれ、魚をたくさん食べること、ポイ捨てなどせず、きれいな海にすることなどを約束してくれました。
紙芝居を聞いている園児 |
その後、園児たちは近くの「森の鼻」まで移動し、数尾ずつのヒラメを入れてもらったバケツをもって、嬉しそうに砂浜まで運びました。そして、波打ち際に一列に並び、先生のかけ声に合わせて、ヒラメの稚魚を一斉に海に放しました。園児たちの「大きくなって帰ってきてね」と、手を振るその姿は、とても愛らしく感じました。
もうすぐ海だよ | 砂浜での放流の様子 |
漁協ではこの他に、船から沿岸へヒラメを放流しており、成長したヒラメを漁師が獲ります。その際、資源保護のため、400g以下のものはリリースすることにしているそうです。
沿岸への放流準備でバケツリレー | 沿岸に放流されるヒラメを乗せた漁船 |
この放流の取り組みにより、みなべ町の漁協では安定した漁獲量を維持できているのだそうです。
磯で遊ぶ子どもたち | 放流されたヒラメ | 帰路に着く子どもたち |
子どもの頃に、名前の知れた魚を間近で見て触れて放流する経験は、将来、海の環境のことを考えるためのベースとなってくれることと思います。
ヒラメの成長もですが、子どもたちの成長も楽しみな1日となりました。
]]>先日、六甲山の巡視中にコアジサイが咲いているのを見つけました。
【コアジサイ】
コアジサイは六甲山の初夏を彩る花。日当たりのよい開けた場所よりも少し薄暗い山中の登山道でよく見かけます。他の花アジサイと比べて少し小ぶりで全体的にかわいらしい雰囲気が漂います。
そんな初夏を前にした六甲山で、モリアオガエルの産卵が始まっているという噂を聞き、先日巡視も兼ねて観察してきました。
【摩耶自然観察園】
六甲山上には大小さまざまな池が存在しており、もともとは氷を切り出す目的で人工的に作られた池でしたが、現在は利用者の憩いの場として整備されている池もあります。
摩耶山掬星台の近くにある摩耶自然公園 あじさい池もその一つで、生き物の観察ができるように木道が整備されております。池の水面上に木々の枝葉が垂れ下がっている環境は、モリアオガエルに産卵場所として利用されています。
【あじさい池 観察しやすいよう木道が整備されています】
【木の枝に登っているモリアオガエルと、枝に産み付けられた卵塊】
カエルの他にも、池の中では落ちてくる卵を狙おうとアカハライモリが待ち構えていました。また木に登ってくるカエルを捕まえるためか、ヘビの姿も・・・
【アカハライモリとシマヘビ】
せっかく産んだ卵やカエルが食べられそうでかわいそう、と思われる方もいるかもしれませんが、これも自然の摂理。生き物たちはこうやって自然の中で関わりあって生きているので、手を加えずにどうか見守ってあげてくださいね。
モリアオガエルだけでなく、初夏を迎えるこの時期はたくさんの生き物たちが動き出し、植物が花を咲かせます。緑豊かな六甲山上の自然を体感しに、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
【水中で気持ちよさそうなモリアオガエル】
]]>新しく熊野地域のアクティブ・レンジャーになりました、東です。
どうぞよろしくお願いします。
今日は、今が旬のアクティビティ「北山川 観光筏(いかだ)下り」をご紹介したいと思います。
北山村は和歌山県ですが、周りを三重県・奈良県に囲まれており、日本で唯一の「飛び地の村」として有名です。
新宮から車で1時間ほど。ずいぶん道が便利になりました。
乗ってすぐに訪れる軽快なスリルは、ウォータースライダーのよう。
その後は、ゆったりと優雅な川の旅を満喫できます。
深く美しいグリーンの川と、それに沿う壮麗な岩の景観は、この世のものとは思えません。
道中、岩場にたたずむカモシカの姿が。初めて見るカモシカに、思わず声を上げました。
【画像はコロナ禍以前に撮影。現在、乗船にはマスクの着用が必須です】
筏師さんが繰り出す、筏をあやつる技にも注目です。
雨の多いこの地域では、古くから、良質な木材の取引を生業とする人々がいました。
なんと、川を筏で下って、はるばる河口のまち新宮の港へと木材を運んだというのです。
現在も、筏を操るその技術は「観光筏下り」に継承されています。
この「観光筏下り」、昨今はコロナ禍を考慮し、一度に乗れる人数を減らしての運航となっています。北山村のスタッフの方々のお話を伺いながら、「コロナ禍における国立公園の利用推進」について、考えることは多いのだと、背筋が伸びる思いでした。
筏に乗る前後、行き帰りはバスで送迎してくださいます。車窓から見える新緑の山々、渓谷、そんな初夏のみずみずしい景色もお楽しみのひとつです。
北山村の筏下りは、5月から開始し、9月末まで楽しめます。北山村のスタッフさんによると、少々雨が降るなか乗る筏も、意外と「いいもの」なのだそうです。ぜひ、吉野熊野国立公園の北山村に足を運んでみてください。
]]>田辺管理官事務所の戸口です。
管内では白浜町の白良浜海水浴場で本州一早い、海開きがGW中にありました。今年は2年ぶりに行動制限のないGWとなり、各地で観光客のにぎわいが戻りました。
さて、海開き前に白浜町では海のクリーンアップイベントが実施され、田辺管理官事務所からも参加させてもらいました。大勢で行うイベントのクリーンアップは楽しく、心地よくもあります。
このクリーンアップイベントは今回が3回目で、アドベンチャーワールド等民間事業者が主催、地元ダイビングサービスや白浜町など官民を越えた協力体制で実施されたものです。今回はさらに和歌山市や地域の企業の皆さんも多数加わった体制での開催で大盛況でした。
ビーチクリーンアップの様子 |
前回は対象場所が白良浜海水浴場1箇所でしたが、今回は白良浜海水浴場と臨海浦海水浴場の2箇所で、陸上班と海中班に別れてプラスチックごみ(プラごみ)を中心にゴミ拾いをしました。私は臨海浦海水浴場の陸上班で参加してきました。
田辺管理官事務所ではこれまでも、ビーチコーミングなどで漂着物のことを勉強してきました。
(ビーチコーミングについては2021年9月及び10月のアクティブ・レンジャー日記でも取り上げておりますので、是非ご覧ください。)
〔9月29日掲載URL:http://kinki.env.go.jp/blog/2021/09/〕
〔10月15日掲載URL:http://kinki.env.go.jp/blog/2021/10/〕
その中で、海岸で頻繁に拾うことができる、浮子が2種あることを知りました。今回も、やっぱりありました!
頻繁に見かける浮子 (※青い浮子は鉛が含まれており、鉛汚染防止のためにすぐに回収したいもの) |
これらは、海外から流れ着いたものです。「漂着物に国境なし」ですね。
また、日本由来のものとして、牡蠣の養殖に使われる豆管やパイプ、ワッシャーがみつかりました。
牡蠣養殖に使用される 豆管 パイプ ワッシャー |
さらに、劣化すると細かく散らばる発泡スチロールの大型ブイも回収されました。(回収していただいた方々、大変だったと思います。ご苦労様でした!)
大型の発泡スチロールなど陸上のゴミ | 海中のゴミ |
今回、新たにおもしろい取り組みがありました。拾い集めたプラごみと自然由来のゴミとを使って、アドベンチャーワールドの動物たちにおもちゃを作ってプレゼントするというものです。おもちゃをプレゼントする対象の動物は、鳥(インコ)、コツメカワウソ、ホッキョクグマでした。
おもちゃの材料に使うものについては、動物への衛生面を考慮して、拾い集めたすぐのゴミではなく、事前に殺菌したものをご準備いただき、それを使って、それぞれが思い思いのおもちゃを作成しました。
おもちゃ制作中 | 完成品はこんな感じ。 |
完成したおもちゃは、飼育員さんのチェック、補強を施した上、実際にアドベンチャーワールド内に展示してくださいました。
おもちゃで遊ぶ インコ ・ コツメカワウソ ・ ホッキョクグマ | ||
(アドベンチャーワールド提供) |
自分たちの作ったおもちゃを使って遊んでくれている様子を見るのは新鮮で、嬉しいものでした。
また、和歌山市加太沖にある友ヶ島(瀬戸内海国立公園の一部)で生まれたウミプラーたちが白浜へ遠足に来ていました。
ウミプラーたちと冒険家オキガミトラジ氏 |
(和歌山市提供) |
ウミプラーとは、和歌山市と地域の企業による漂着物対策の中で生まれたキャラクターです。プラごみの海洋動物や環境への影響を子どもたちにわかりやすく教えてくれました。
このようなユニークな活動はビーチクリーンアップ・ビーチコーミングなど、海岸の楽しみ方を広げることにつながります。
共通の漂着物問題を、市町村や官民の垣根を越えた取り組みとして参加者と共に考え、楽しく体験できる素晴らしい機会であったと感じています。
気持ちのよい季節ですので、お休みの日には外に出て、自然を楽しむ機会も増えることと思います。
田辺地域で予定されている近日のビーチクリーンアップイベントをご紹介します。
良かったらご都合の良い日に、一度、参加して、楽しさを体感してみてください♪
田辺市5地区の海岸や河口 6月18日(土)
https://www.city.tanabe.lg.jp/
白浜町志原海岸 6月5日(日)
http://www2.w-shokokai.or.jp/hikigawa/index.html
(新型コロナ感染症対策として密は避け、状況に応じてマスクを着用してのご参加をお願いいたします。)
]]>4月中旬頃から、竹野スノーケルセンターのある大浦湾の岩場ではワカメが生えている様子が見られました。
(大浦湾の浅瀬の岩に生えているワカメ)
生だと茶色っぽく見えるワカメですが、お湯にさっとくぐらせると鮮やかな緑色に変わります。さくさくとした歯ごたえのワカメしゃぶしゃぶが楽しめるのもこの時期ならではです。
下旬から5月に入るとワカメ刈りも最盛期に入ります。
事務所周辺の海でもワカメ刈りが盛んに行われ、晴れた日には洗濯物のように干されています。なかでも、田結(たい)地区の漁港には大きなワカメ干し場があります。ちょうど巡視の際に見ることができました。
(田結(たい)地区のワカメ干し場)
朝とれたワカメを地元の方々が手分けして干している様子です。
さんさんと降り注ぐ太陽と爽やかな春の風に吹かれて周辺にはふんわりと磯の香りが漂っています。
干されたワカメは包装され、周辺のお土産屋さんなどで販売されています。
例年5月中頃にはわかめ祭りが開催されていましたが、ここ数年コロナウイルス感染症対策で中止されています。来年度は是非開催されることを楽しみに待っています。
竹野自然保護官事務所より但馬海岸の春の風物詩でした。
それでは、また次回。
]]>皆さん、こんにちは。神戸自然保護官事務所の中村です。
街中での桜の季節は終わってしまいましたが、六甲山ではまだコバノミツバツツジが咲いていました。小ぶりなツツジではありますが、この花が咲いているのを見ると、私は六甲山の春の訪れを感じます。
今日はそんな六甲山系の山の一つである『東お多福山』をご紹介いたします。
【山頂付近には草原と阪神間が見渡せる眺望があります】
六甲山系では珍しい草原が特徴の山として人気の『東お多福山』ですが、この草原は自然にできたものではありません。
もともと東お多福山は、茅葺き屋根の材料や生活の燃料を得るための茅場として人の手が入ることによってススキが優占する草原が広がっておりましたが、戦後、人々の暮らしの変化によりススキが利用されなくなったことで、ネザサが優占する草原へ変化していきました。そこで、ススキが優占する草原を再生しようと、「東お多福山草原保全・再生研究会」が関係行政機関などと協力して、平成18年度から継続的にネザサの刈り取りを行い、ススキ草原の回復に取り組んでいます。
【ネザサ刈りの様子】
また、同研究会では毎月、東お多福山とその周辺に生息する植物の定期的な調査と並行して、一般の方向けの植物観察会を実施しており、事前申し込みをすればどなたでも参加することができます。
【観察した植物をモニタリングしていきます】
【今の時期は様々なスミレが観察できました】
東お多福山はススキを目当てに秋に来られる方が多いのですが、この時期にもスミレなどに代表される様々な春の植物をたくさん観察することができます。この機会にぜひ一度、東お多福山へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
兵庫県主催 春の東お多福山ハイキング:「2022 春の東お多福山ハイキング」の参加者募集
]]>直前まで職場は変わりながらも、鳥取砂丘に関わる仕事に永年従事してきました。その間、ガイドとしても多くのお客様に鳥取砂丘の魅力を案内してきました。出身は、大山隠岐国立公園大山の西麓で学生時代から大山の自然も存分に楽しんでいました。もちろん山陰海岸国立公園も学生時代、社会人となってからも仕事や釣り、撮影小旅行などプライベートでもよく通ったところです。このたび、アクティブ・レンジャーとして山陰海岸国立公園の仕事ができることを大変うれしく、幸せ者だと思っています。皆様の期待に応えられるかは、少し不安はありますが・・・。
自己紹介は、さておき、先日、自然保護官と管内の施設点検など巡視に出かけましたのでそのときの様子などを紹介させていただきます。
まずは、鳥取砂丘ビジターセンターへ。来館者は、春休みに入り少し増えた感じでしたが、春休みが終わるとまた静かな鳥取砂丘に戻り、ビジターセンターでは来館者もゆったりと過ごされていました。
【春休みの鳥取砂丘】
つづいて、岩戸(いわど)海岸、大谷(おおたに)海岸と車で看板などを確認しながら進み、鴨ヶ磯(かもがいそ)へ。
鴨ヶ磯では、海岸に沿って整備された遊歩道を歩いて巡視します。鴨ヶ磯展望駐車場から高低差約50mの遊歩道を下っていくと白砂のポケットビーチ的な小鴨ヶ磯にたどり着きます。続いて石英斑岩の柱状節理が見事な椿谷を抜けると大鴨ヶ磯へ。ここも花崗岩由来の少し粗い粒の白い砂浜で、永年鳥取砂丘の黄色っぽい砂ばかり見ていた私は、その様に感動しました。また視線を海に向けるとマツの生える大小の小島が浮かんでいます。これまでは、展望駐車場(海抜約50m)から俯瞰するばかりでしたが、磯浜から間近にみる景色は、絶景です。椿谷手前の遊歩道は、満潮時は通行に支障があるため注意看板を数カ所設置していますが、特に異常はありませんでした。この後、遊歩道沿いの落石など確認しながら令和3年3月に開通したショートカットコースで県道に戻り、車道をしばらく歩き元の場所へ着くと汗ばむ位の運動量でした。
【椿谷付近からの島々】
【大鴨ヶ磯】
途中、数組の観光客とすれ違いましたが、皆さん感動されている様子で何よりでした。
さらに車で東に向かい、兵庫県は新温泉町の諸寄港を見下せる城山園地へたどり着くと昼の時間となりました。ここでは、案内看板などに支障が無いか確認しました。桜の花も満開で、花見をしながらお弁当を食べる方々もいらっしゃいました。桜の花咲く時期に初めて来ましたが、他の利用者も風景を撮影するなどここの景観に感動されている様子でした。
【諸寄港】
【城山の桜】
山陰海岸は、いつ来ても素晴らしい。ここから見る日本海に沈む夕日もきっと素晴らしいでしょう。 機会があれば是非夕陽の時間に様子を見てみたいです。
まだ巡視は、続きましたが、今回はここらで初日記をさせていただきます。
山陰海岸一帯は、2月下旬から大量の注射器の漂着が続いています。危険ですので、海岸を散策される際はご注意いただき、発見された場合は、手を触れずに最寄りの県事務所や市町村にご連絡ください。
]]>さっそくですが、兵庫県西宮市の国指定鳥獣保護区である浜甲子園に行ってまいりました。
浜甲子園は昨年6月から今年の3月末までの約10か月の間、遊歩道が県の防潮堤かさ上げ工事による立ち入り禁止区域となっておりましたが、無事に工事も終わり、一般の方々が立ち入りできるようになっております。
環境省では、防潮堤の刷新にあわせて、浜甲子園に設置している看板を新しくしました。
【鳥獣保護区域を示す案内看板は一般の方に親しみやすいようなデザインに】
また、防潮堤かさ上げ工事が行われる中で、遊歩道沿いに以前になかった干潟が一望できる展望スペースが出来ましたので、干潟で休む野鳥を観察しやすくなりました。
ちょうど今のシーズンは浜甲子園でシギ・チドリ類(略して「シギチ」と呼ばれます)を観察することが出来る時期。私が見に行ったときはまだシギチたちは飛来していませんでしたが、展望スペースからは干潟で休む黒い頭巾をかぶったような夏羽に変わったユリカモメや、魚を追いかけるコサギなどを観察することが出来ました。
展望スペースでは野鳥を驚かさないよう、なるべく静かにして観察するようにしてくださいね。
また、西宮市では4~5月の間、シギチの餌場を守るため一定区画への干潟への侵入を市の条例により禁止しておりますので、ご注意ください。
※西宮市の条例については、詳しくは以下をご確認ください
]]>紀州和歌山では三寒四温が続いていますが、梅、桜の順に春を届けてくれています。
みなべの梅の花 | 田辺・闘鶏神社の桜の花 |
さて、今月3月5日、田辺管理官事務所で実施した「カラフル海藻観察会〜天神崎で海の春を体感!〜」についてご報告いたします。
今回の自然観察会では、紀南の海で「ヒロメ」というワカメの仲間の海藻を研究されている講師をお招きし、ご応募いただいた小学4年生から大人までを対象に天神崎で海藻について教えていただきました。
(海藻については、1月のアクティブ・レンジャー日記でも取り上げておりますので、是非ご覧ください。 URL:https://kinki.env.go.jp/blog/2022/01/2022.html )
田辺市にある天神崎は、ナショナル・トラストの先駆けとなった場所でもあり、地域住民のみなさんの手で、山から海へ一帯となった豊かな自然環境を守られてきた場所です。
天神崎には海岸部分にシンボルとなっている丸山があり、満潮時にはその周辺一面が水面下となるものの、潮が引くと平らで広大な磯が姿を現します。
干潮時の天神崎・丸山 |
集合場所で安全対策などの話をしてから、いざ出発。
磯場への降り口にはこんな看板がありました。
警告板 |
講師からも、海藻の中には水産資源として管理されるものがあり、場所によっては採取が禁止されているところもあることを教えていただきました。海藻の採取についても魚や貝と同じで、規則があるので、守らないといけませんね。
磯場につながるスロープを降りた場所の周辺に、早速、満潮時に打ち上がった海藻が集まっているところがありました。その中に、小さな丸いものが付いている海藻を発見。この海藻はホンダワラという海藻の仲間であることを教えてもらいました。
ホンダワラの仲間 |
この丸いものは、海の中で浮きの役割をしているものだそうです。海の中で生息している海藻は、光合成をするため、太陽のある上に向かって伸びますが、その時に体を安定させるため、浮きをもつものがあるそうです。
この浮きは、指で潰すと
「プチッ」
音を鳴らして潰れます。これはやってみるとなかなかおもしろく、みんなでプチプチ鳴らして遊びました。
「プチッ」を体験 |
次に、磯の先端を目指して波打際沿いに移動しながら、海藻を観察しました。緑色をした海藻と、茶色をしたひげのような海藻が多く見られるところがありました。岩礁にくっついている状態ではなんてことのない海藻に見えますが、実は、普段私たちの生活の身近にあるものです。
緑が鮮やかなアオサ・茶色をしたひげのようなフノリ |
緑が鮮やかな"アオサ"や、ひげのような"フノリ"は、お味噌汁の具にもなる海藻です。 "アオサ"は、焼きそばやお好み焼きなどにかける青のりの1種としても食べたことがあるかと思います。また、 "フノリ"は、食材としての他、古くには「天然糊(のり)」として漆喰の材料や織物の糊付けに利用されてきました。そのため漢字では「布糊」という字が当てられています。相撲力士が廻しにつける「下がり」を糊付けするのにも用いられているそうです。
岩礁の先端近くで、波が比較的強くあたる場所には、さらにたくさんの海藻を見ることができました。
カヤモノリ | タイドプールの海藻 | ウミトラノオ、と...? |
その中にあるこの海藻、何だか分かりますか?
ヒントは給食のレギュラーメニューで、きっと、ほとんどの人が食べたことのある海藻です。
お馴染みの海藻です |
これは、なんと、あの「ヒジキ」です!参加してくれた小学生からは、「いつも食べているヒジキからは想像がつかない」という声があがっていました。
ヒジキは生の時は写真のように黄褐色をしており、渋みが多くてそのままでは食べられません。生のヒジキはお湯にくぐらせると、苦み成分のポリフェノールがお湯に移ることでお湯は茶色くなりますが、ヒジキ自体は鮮やかな緑色になるそうです。
茹でる時間が長くなるほど、ヒジキの色がくすんできます。長く茹でることで苦みが取れ、鍋の素材が鉄である場合、その鉄と反応してヒジキはより黒くなるそうです。
茹でた後、天日干しをして、みなさん、お馴染みの黒いヒジキとなります。ヒジキは思いのほか、手間のかかった食べ物であることを勉強し、今後はヒジキをしっかりありがたくいただこうとみんなで話しました。
観察会の様子 |
その後は室内で、海藻についてお話しを聞きました。
「かいそう」には、「海草」と「海藻」があること、
「海藻」には大きく分けると緑色(緑藻類)、茶色(褐藻類)、紅色(紅藻類)の3種類があること、
茶色の海藻はお湯にくぐらせると鮮やかな緑色に変化することなどを教えていただきました。
最後に、これらの海藻を紙に押し当て、乾燥させて絵を作る「おしば体験」をしました。
(※おしば体験で使用した海藻は、講師が事前に適切に準備したものです)
1.海藻選び | 2.紙に海藻を広げ、絵にする |
3.水切り | 4.乾燥準備 |
おしば体験 |
みんな初めてのおしば体験がおもしろく、独創性のある作品が次々に並んでいました。これら作品は乾燥後、ラミネート加工して完成となります。
参加者の作品 |
今の季節は海岸で観察できる海藻の種類が多く、いろいろな発見があると思います。多種多様なカラフルな海藻を探しに、ぜひ、春の海岸へ足を運んでみてください。繰り返しになりますが、採ってはいけない海藻は、無断で取らないようにしてくださいね。
※天神崎は干潮時には広大な磯場が広がりますが、潮が満ちて来ると、帰り道が海水で見えなくなることがあります。お越しの際は、事前に干満の時間を確認し、安全に気を付けて楽しんでください。また、磯場には滑りやすいところがあるので、足元にはよく注意してください。
]]>つい先日まで寒かった神戸も急に暖かくなりました。街中では早咲きの彼岸桜(ヒガンザクラ)や菜の花など、色鮮やかな花たちが通る人を楽しませていました。
さて、先日は兵庫県加古川市にある加古川市立平岡南小学校3年生のクラスで出前授業を行いましたので、その様子を紹介します。
3年生が総合学習の時間で取り組んでいる『生き物について』をベースとして、国立公園の話や外来種の問題、地域の自然などにも触れた授業を行いました。
外来種問題のテーマでは、オオクチバス(ブラックバス)やカミツキガメ、ヒアリなどの身近な外来種のはく製を持参しました。
『カミツキガメって名前なのに歯がない!』『ヒアリってこんなに小さいの?!コンテナに入っていても気づかないかも・・・』など、実物を見て発見することが多かったようです。
外来種の問題を学んだ後、今の自然環境を守るために自分たちに何ができるかみんなに考えてもらいました。多様な視点からの新鮮な意見は、私にとっても新たな学びになりました。
今回の出前授業が、より自然や生き物、国立公園のことについて知りたい、学びたいと思うきっかけになってくれればうれしいです。
]]>竹野自然保護官事務所の久畑です。
先日、竹野自然保護官事務所管轄の一番西端まで巡視に行きましたのでその途中にある余部埼(あまるべさき)灯台をご紹介します。余部埼灯台は香美町香住区余部の御崎(みさき)地区にあり御崎の灯台とも呼ばれています。御崎地区に行くには、リアス式の海岸線に沿った細く曲がりくねった車道を登っていきます。御崎地区には平家の落人伝説が残っており、険しい崖に張り付くように民家が建っています。コロナ禍で数年中止になっていますが1月には平家の武将に扮した3人の少年が源氏に見立てた的に向かって矢を射る「百手(ももて)の儀式」が行われています。
御崎地区を抜け細い車道を登っていくと灯台の駐車場に到着します。
海がずいぶんと下の方に見えますね。
駐車場からの眺め
御崎灯台は海面から灯火までの高さが284mと日本一高いところにある灯台で、白い建物の中から大きなレンズがのぞきます。
余部埼灯台
いまだに点灯している姿を見たことはありませんが、漁り火の綺麗な頃に見に来たいと思います。
あいにく薄曇りのお天気でしたが東の方を見ると事務所のある竹野町の猫崎半島まで見ることができました。お天気が良ければお隣の京都府にある丹後半島まで見る事ができます。
東側の眺め
岩や小島ででこぼことした海岸線は山陰海岸らしさを感じますね。車道が狭いので十分注意してお越しください。
それではまた次回。
]]>このアクティブ・レンジャー日記でも何度か紹介している生石公園(淡路島・洲本市由良)では、令和4年2月24日(木)から木道の改修工事を行っております。
そのため、現在一部区域の立ち入りが制限されておりますのでご注意ください。
※工事について、詳しくはこちらをご確認ください。
生石公園は環境省が整備し、多くの方々にご利用いただいております。
施設内の木道の手すりや支柱などに破損やぐらつき・腐食等が生じた場合は、今回のような整備工事を行い、皆さまがより安全に利用できるよう努めております。
生石公園周辺では梅の花がもうすぐ見ごろを迎えます。改修工事は令和4年3月18日までに終了しますが、引き続き皆さまに安全にご利用いただけるよう点検、巡視等の管理を行っていきます。
]]>三重県大杉谷には、かつて木材を搬出するために使われていた森林鉄道の軌道跡が、今も残っています。これを、新たな観光資源として活用できなか検討するため、昨年(令和3年)、地元行政関係者等により現地調査が実施されました。今回は、その調査の状況をお伝えします。
三重県尾鷲地方は古くから木材運搬の民間鉄道があり、1897年(明治30年)頃には運行されていたと言われています。大杉谷森林鉄道は1931年(昭和6年)から、1974年(昭和49年)頃まで運行されており、周囲は全国有数の杉産地としても知られています。
軌道跡を踏査すると、風呂場や食器などが残されており、周辺はノスタルジックな雰囲気が漂い、当時の様子を思い浮かべることができました。
区間によっては、森林鉄道のレールが現存しており、産業遺産、地域資源として、とても価値あるものと感じました。
調査した場所は、一般の方の立入が禁止されている地域で、今回は特別な許可を得て入山しました。参加者からは、ガイド付き限定での利用など、活用の可能性について様々な意見が出ていました。実際に利用するとなると、様々な課題のクリアが必要になりますが、今後の展開が楽しみです。
]]>この間までこのまま春が来るのかなと思わせるような陽気でしたが一転、事務所周辺でも積雪となりました。今シーズンは強い浜風に雪雲が内陸の方へ流されがちでほとんど積もることはありませんでしたが、シーズンも終わりがけになり、今シーズンいちの積雪量となりました。
一面の雪景色を撮影しようと、竹野浜を一望できるジャジャ山の展望所へ上がってきました。同じ考えの方がおられたようで、雪道の遊歩道に足跡が見られました。雪のない時にはシカやイタチなどの痕跡があるので、人の足跡の他に動物の足跡がないかと探しながら上がりましたが意外にも小鳥の足跡しか見つかりませんでした。
展望所に到着し、見下ろした景色です。
(竹野浜と猫崎半島の雪景色)
猫崎半島もうっすらと雪をかぶっています。屋根に積もった雪と空、海の色とまるで水墨画のようです。写真を撮っているほんの数分の後に吹雪となり、一瞬で視界が真っ白になりました。
(強い西風と雪で一気に視界が悪くなる)
こうなると目を開ける事もままならず、冷たい風で耳が痛くなります。吹雪いたり、止んだりを繰り返すので東屋でしばらく風をしのぎ、展望所から下りました。
翌日には巡視・施設チェックも兼ねて京丹後市にある兜山展望台へ上がってきました。遊歩道ではシカ・ウサギの足跡が見られました。人の足跡も!
(雪の上に残されたウサギの足跡と人の足跡)
展望台からの眺めです。
昨日とは変わって青空の見られる天気で、そのため一面真っ白とはいきませんでしたが、普段あまり目にすることのない積雪のある久美浜湾の景色を見ることができました。
(積雪のある久美浜湾の景色)
遊歩道を下りている途中で、登ってくる方々とすれ違い、挨拶を交わしました。
思いの外、積雪時でも利用があることに驚きました。
雪があっても(雪があるからこそ?)見たい景色と思われているのだと、改めて感じました。
積雪時のご利用は、滑りますし、階段など見にくくなっておりますので足元に十分ご注意ください。
それではまた次回。
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