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近畿地方環境事務所

地域金融機関の経営トップ等への脱炭素関連インタビュー

株式会社 栄工業

 
 株式会社 栄工業は、精密板金を主に、小物から大物までの製缶および機械加工を自社で行うことができる総合加工業の滋賀県に所在する事業者です。
 サステナビリティ・リンク・ローン(以下、SLL)の活用や中小企業版SBTの取得など、株式会社 滋賀銀行とともに脱炭素経営に先手で取り組む同社の木浦 晋一 代表取締役に話を伺いました。

いずれ必要に迫られるのであれば、先手を打って脱炭素で商機をつかむ

ー環境配慮や脱炭素に向けた意識をお持ちになったきっかけをお聞かせください。

 環境配慮への第一歩となったのはISO14001の取得です。取引先が環境関連の事業を行っていたこともあり、弊社としても環境配慮や環境マネジメントを意識し始めました。
 その後2015年に工場を移転する際に、高効率な生産設備への入れ替えや運搬車のEV化、照明のLED化などを行ったのですが、当時、省エネルギーに取り組んだ目的は、コスト削減でした。
 しかし、昨今では、半導体関係を始めとした既存の取引先に加え、車載用電池など市場拡大が見込まれる分野においても、仕入先を巻き込んだ脱炭素の取組が活発になってきており、弊社として脱炭素を進める目的が、取引継続や新規取引獲得に変わってきました。
 弊社がさらに成長するためにいずれ必要に迫られるのであれば、先手を打って商機をつかもうと考え、野心的な目標を掲げて脱炭素に取り組んでいます。

金融機関は、脱炭素分野の社外専門人材

ー滋賀銀行との取組の経緯と、その内容についてお聞かせください。

 滋賀銀行は全国に先駆けて脱炭素に目を向けてきたこともあり、環境配慮の観点を上手く融合させた金融商品を多く有しておられます。また、行員の提案力等の個の力に加えて組織としての対応力も高いところが、他の金融機関には無い特徴だと思っています。
 今回、日頃のご支援で信頼関係があったところに、支店や本部の方々から、弊社取引先の脱炭素の動きも鑑みてSLLの提案がありました。SLLでは県所定の計画書を作成するのですが、ISOに基づき蓄積していた電力やガスのデータ等をもとに数値を算出し計画に落とし込むサポートをいただきました。
 その後SLLの目標達成の見込みもあり、次のステップとして、中小企業版SBT取得の提案もいただきました。滋賀銀行にとっても初のSBT取得支援だったそうですが、「手探りですが、まずやってみましょう」ということで、いわばトライアルで一緒に勉強しながら進めました。滋賀銀行としても、「トライアルが成功すれば他の事業者へも横展開できる」と先行投資の意識を持って取り組まれていたのではないでしょうか。
 本部のカーボンニュートラル推進チームの行員には、計画策定や英文申請対応などのサポートをいただき、まさに弊社における脱炭素分野の社外専門人材だと思っています。

脱炭素経営も「三方よし」、基礎となるのは担当行員との「人と人との付き合い」

ー脱炭素に向けて金融機関に期待する役割と、中小企業に向けたメッセージをお願いします。

 行政には無いビジネスの視点を持って、事業者・金融機関・事業者の顧客という三者がwin-win-winになる提案ができることこそが金融機関の強みであり役割だと思います。商売をする者同士、対等な立場で両者にメリットがある方法を考えないと上手くいきません。
 また、事業者と金融機関が良好な関係を築くことが何より重要だと考えています。健全な財務体制があってこその、前向きな脱炭素の取組提案があるという点はもちろんのことですが、少なからずリスクがあるなかで脱炭素に向けた投資に踏み切れるかどうかを決めるポイントは、日々の担当行員との「人と人の付き合い」で構築される信頼関係だと考えています。
 中小企業の経営者としては、これらの点も意識しながら、目先のことだけでなく中長期的なビジョンを持って、金融機関と共に攻めの脱炭素経営を考えていくことが大切だと思います。

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