地域金融機関の経営トップ等への脱炭素関連インタビュー

　東証プライム上場企業や大手金融機関をクライアントに持つ、サステナビリティ経営コンサルティング・ESG投資アドバイザリーサービスを提供する株式会社ニューラル 夫馬 賢治 代表取締役CEOに、地域金融機関の重要性や期待すること等について伺いました。

ー脱炭素における地域金融機関の重要性について、お聞かせください。

　脱炭素は、あらゆる業種や様々な規模の事業者にとって向かい風になってしまうのか、あるいは追い風にできるのかという経営視点の課題となります。
　ですが、多くの中小企業は、そもそも何のために脱炭素の取組を行っていくのか理解できていないように思います。この原因の一つは、実は情報格差であり、地方になればなるほど情報は入りづらい状況です。そこで、地域金融機関は、自ら得た様々な情報を地域の中小企業へ伝えることによって、この情報格差を解消していくことが大事になります。
　また、地域金融機関は、直接企業の社長に経営視点で話をできるプレーヤーであり、例えば、脱炭素への対応状況がサプライチェーンの中でどのように取引や売上に関わってくるのかなどは、地域経済そのものに向き合って動かしていこうと考えられる立場である地域金融機関でしかアドバイスできないでしょう。地域金融機関の役割はものすごく大きいです。

ー脱炭素の推進に向けて地域金融機関に期待することについて、お聞かせください。

　脱炭素は地球環境のためだけではなく産業政策や地域経済圏を発展させるための取組です。この点、メガバンクはどの地域で仕事をするかを選ぶことができるのに対し、地域金融機関と地域経済は運命共同体になります。
　中小企業の設備投資や事業ポートフォリオを変更するには資金需要が発生しますが、これを支えてくれて理解してくれる地域金融機関がいなければ、うまく事は運べません。先進的な地域金融機関は、脱炭素分野の資金提供にかなり積極的になっており、中小企業に情報提供し、経営者の脱炭素分野の参謀として、共に投資計画等を考える存在になっています。
　このように地域経済に目を向け、地域で頑張ろうとする中小企業を理解できる地域金融機関がいれば、しっかりとファイナンスできます。地域金融機関は地域経済全体を維持、向上させることができる能力があり、かつ、そうした使命感を持っていただきたいです。

ー最後に、地域金融機関の経営トップに対するメッセージをお願いします。

　先進的な金融機関は、解決しなければならない課題を全部逆算し、それぞれのゴールに対して今やるべき課題を経営ミッションとして、毎年テーマを定めて進めています。重要なのはまず、トップがやると腹を決めることができるかどうかです。トップからのメッセージを出し続け、そのうえで組織内の推進役とともに粘り強く取り組んでいただきたいと思います。もし、組織内に人材、担い手がいなくても外部から必要な人材を招いたり、逆に職員を外部へ派遣して学ばせることもできるはずですので、人材不足が致命的なボトルネックと諦めないでもらいたいと思います。
　また、大事なことは、データや情報により頭だけで理解することではなく、当事者から直接話を聞いて心で取組の必要性を理解するということです。とてもシンプルですが、先進的な取組を行う金融機関のトップと対話をしてみることも有効です。

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