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近畿地方環境事務所

地域金融機関の経営トップ等への脱炭素関連インタビュー

大和信用金庫 理事長 中村 正德

 中小・小規模企業を中心とした地域の事業者が、脱炭素社会に取り残されることに危機感を抱いたことなどから、自治体との連携強化を中心とした脱炭素の取組を推進されている、大和信用金庫 中村 正德 理事長に、脱炭素に関する取組方針や支援策等について伺いました。

職員も事業者も「脱炭素について知らない、分からない」ではもう済まない

ー脱炭素の取組を行うことになったきっかけや取組方針についてお聞かせください。

 当金庫では、2023年度の業績発展計画を策定するにあたり、「脱炭素社会の実現に向けた取組は全世界レベルで求められており、国や大企業だけの関心事ではなくなっている。地域の一人一人が関心を持ち、できることから取組を進めていくことが必要であることから、脱炭素の取組を柱の一つとすべき」との考えから、先駆けて取組を行っていくとの方針を決めました。
 何年か前の話です。当金庫が融資していたお客様が、取引先からクリーン工場の更なる進化を求められていたにも関わらず、その依頼に応じなかったために1年後にプツッと取引を解消されるという事態を、私自身が目の当たりにしました。
 つまり、下請け企業が脱炭素の取組を進めていないとこのような最悪の事態になってしまい、反対に、脱炭素の取組を進めているとサプライチェーン上で優位に立てる、ということを意味します。このような実例・実感をもって、まずは脱炭素の取組の重要性を奈良県内の事業者に対して周知する必要があると考えたことが、積極的に脱炭素の取組を行うに至った一つのきっかけです。
 取組を進めるなかで、当金庫の支店長18名全員が、各担当地域内に所在する事業者10社に対して、脱炭素に関する意識・取組状況についてヒアリングを実施したところ、180社のうち62社が既に脱炭素の取組を進めているという回答がありました。一方で、関心のない取引先も多くあり、更に啓発が必要であると感じています。
 年度当初の支店長会議では、当金庫全体で脱炭素支援に力を入れる旨を表明しています。脱炭素への対応は、今後、事業者に必ず求められる課題であり、「脱炭素について知らない、分からない」では取り残されてしまう、と職員に向けて発信しています。

自治体との連携などを通じて、脱炭素への取組を県内全域に拡げていきたい

ー現在注力している、取引先や地域に対する脱炭素支援策についてお聞かせください。

 脱炭素の重要性を県内事業者に周知するため、自治体との連携を重視しています。
 特に、ゼロカーボン宣言を公表するなど、脱炭素に意欲的に取り組む方針の県内市町村に対しては、連携協定の提案や、特別融資制度の実施等を進めています。自治体との連携を図ることで、市政だよりやセミナーなどを通して、地域に対して広く早く発信することができるため、啓蒙活動にも繋がると考えています。 
 脱炭素支援策としては、事業者向けには脱炭素等につながる設備導入資金に活用でき、個人向けにはEV車等の購入や太陽光発電設備等を設置する際などに活用できる「やましん脱炭素応援ローン」の取り扱いを開始したほか、「やましん脱炭素応援定期預金」を発売しました。
 これらの金融商品を通じて県民の皆さまに脱炭素の重要性を発信していますが、現場の職員が理解していなければ、事業者に対して分かりやすい説明を行うこともできませんので、脱炭素に関する職員研修の実施や、脱炭素に関する取組実績を評価する制度を導入しています。

顧客第一(ファンづくり)」をモットーに、脱炭素の取組の重要性を熱く発信してほしい

ー職員の皆様に対して、期待を込めたメッセージをお願いします。

 当金庫では従来から「顧客第一主義」を掲げていますが、脱炭素については、知らずに取り残されることが取引先にとって最もよくないことだと考えています。我々は、取引先に脱炭素の重要性を知ってもらうために何ができるか考える必要があります。
 職員は、現場で取引先と対話をする際に「脱炭素」というワードを意識的に取り入れてください。そうすることで、脱炭素についてあまりご存じない取引先が当金庫に相談するきっかけを作ることができます。取引先にどのようなことでも相談してもらえる関係性をぜひ構築してください。
 地域あっての当金庫。地域の発展なくして当金庫の発展はありません。
 入社前に「地域のために頑張る。地域に恩返しをしたい」と言っていたことを忘れずに、「顧客第一(ファンづくり)」をモットーに、脱炭素の取組の重要性を熱く発信してくれることを期待しています。

ご紹介いただいた先

【本ページに関するお問い合わせ先】
 近畿地方環境事務所 地域脱炭素創生室
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