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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

東お多福山にてススキの収穫!

2019年12月23日
神戸 中村高也

 皆さんこんにちは。神戸自然保護官事務所の中村です。

 六甲山の紅葉も終わりを迎え、今年は比較的暖かい日が続いていますね。神戸ルミナリエも15日で閉幕し、街中は年末の準備に大忙し。まさに師走という言葉通り、人が忙しそうに行き来しています(もちろん私も)。

 さて、先日はそんな街中を飛び出して、瀬戸内海国立公園六甲地域にございます東お多福山で草原の保全活動を行っている皆さんとご一緒してきたので、その様子をご紹介します。

東お多福山の山頂付近の草原 山頂からの眺望も素晴らしいです

    【東お多福山の山頂付近の草原】      【山頂からの眺望も素晴らしいです】

 写真でもわかりますが、東お多福山の山頂には現在、草原が広がっております。開けた草原で登山で疲れた体を休めて、レジャーシートを広げてランチなんて、最高ですよね。

 六甲唯一の草原の山として有名な東お多福山、過去のお話しをしますと、戦前はかやぶき屋根の材料となるススキを得るために人の手が入ることで80ha以上ものススキ草原が維持されていたのだとか。ですが、戦後はススキが利用されなくなり、人の手が入らなくなった草原は高さ2mを超えるネザサに置き換わってしまいました。

 現在の美しい草原は、「東お多福山草原保全・再生研究会」の皆さんが13年にわたりネザサの刈り取りを続けてきたことによって維持されているものです。足下に目をやると、スミレ類やキキョウ、リンドウといった開けた場所を好む多様な花々も見られます。適度に管理された自然環境では、人の手が入らない環境よりも生物多様性が高くなる場合があることが知られており、「里地里山」と呼ばれます。この東お多福山の草原は、市民の取り組みを中心に、関係する行政機関や研究機関等、多くの人が関わることによって維持されている「里地里山」ということができます。

12月のネザサ刈り取りの様子 リンドウの姿も(10月撮影).

    【12月のネザサ刈り取りの様子】    【リンドウの姿も(10月に撮影)】

 そして今月は、普段のネザサ刈り取り作業に加えて、草原に繁茂するススキの収穫が行われました。草原が広がるにつれて、収穫されるススキも年々増えているようで、一年に一度の刈り取り、皆さん気合十分です。

刈り取り後のススキをまとめて束に 皆さんで分担して運びました

   【刈り取り後のススキをまとめて束に】  【皆さんで分担して運びました】

 こうして収穫されたススキは、県内のかやぶき屋根の建物のふき替えに使用されています。なお、この時期には地面の下にススキの冬芽ができているため、刈り取りによるススキへの悪影響はないばかりか、陽当たりがよくなるため翌年のススキの生長を助けます。

 手つかずの自然も大切ですが、このススキ草原のように人と自然が共生し「利用することによって保全される」自然もまた素晴らしいものです。生活が便利になるにつれて、このような自然は失われています。それは日本の文化が失われていくようでさみしい思いもあります。

 みなさんもぜひ東お多福山に登っていただき、草原の風景を楽しみつつ、人と自然の共生について思いをはせてみてはいかがでしょうか。