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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

イベント報告

2018年11月01日
熊野 岩田佐知代

 こんにちは、熊野自然保護官事務所アクティブ・レンジャーの岩田です。

11月となり、朝夕冷え込む季節となりましたね。

前回案内させていただいた「地球の息吹を感じよう!荒船海岸 耳の鼻」イベントの実施報告をさせていただきます。

 10月8日(月・祝)、たびかさなる台風襲来で、開催前には、何度も天気予報とにらめっこをしながらも、快晴の下、開催することができました。

「耳の鼻」とは荒船海岸の突端にある地名で地形図でも確認できますが、耳なのか鼻なのかとても不思議な名前の地名で興味がわきます。

「耳の鼻」って、聞いたことはあるけれど行ったことがないという方や、この地にもう一度行ってみたかったという地元の方々など参加者19人全員が浦神から荒船海岸までの山道を踏破し、地球の息吹!まさしく「よしくま」の醍醐味(だいごみ)を体感していただくことができました。

浦神から荒船海岸までの山道はかつて、地元の漁業、炭業や農業の営みを支える日々の生活道でしたが、漁業は船での操業となり、今ではほとんど使われなくなりました。その山道を1時間ほど歩き、眺望のきく場所で目的地の「耳の鼻」を確認しました。

耳の鼻の眺望

 海岸に降りて、歩くと地層が斜めに傾いた岩石が見られます。講師の先生の解説では1700万年前に前弧(ぜんこ)(かい)(ぼん)()()()(海底のくぼ地)に堆積した地層できた岩石が、地殻変動によって流動し、斜めに傾いてできたということです。

海岸沿いを歩く

 海岸沿いをさらに30分ほど歩き、「耳の鼻」をめざしました。

耳の鼻の入口と思われる場所で、「え?ここが耳の鼻?」と思いながら進んでいくと、まさしく吸い込まれそうな鼻の穴が視界に入ってきます。皆さん「わぁすごいね!」の一言でした。

普段はあまり立ち入ることのない、荒波にもまれ浸食されながらも大自然がそのままの状態で残された、5つの穴がある圧巻の海蝕(かいしょく)洞門(どうもん)(補足1)を通り抜けました。

海蝕洞門内

 解説を聞きながら節理(せつり)(割れ目)と断層(だんそう)(ずれ)が入り組んだ岩石を観察した後、隆起し、厚い泥岩と砂岩層の中で固まりきらないうちに褶曲(しゅうきょく)(補足2)ができた層内褶曲の岩石上で、傾きのポーズで記念撮影を行いました。

層内褶曲で記念撮影

 潮の干満の関係で、あまりゆっくりすることはできませんでしたが、帰りは台風で漂着した流木の多さを感じながら浦神湾内の海沿いを歩き、ノジュール(堆積岩中にできる硬い塊)を見つけたり、細かな石英(ガラス光沢の結晶)がちりばめられている石を観ながら、壮大な自然海岸の手つかずの大自然を満喫していただくことができました。

泥岩の中のノジュール 石英質の石

 これからも吉野熊野国立公園のすばらしいところを皆さんに情報発信できたらと思いますので、

ぜひ「よしくま」へ足をお運びください。

  補足1:波の侵食作用等で柔らかい部分の岩が削られ洞窟となったものを海食(かいしょく)(どう)と呼び、岩を貫通し、       

      トンネル状になったものを海蝕洞門と呼びます

  補足2:堆積された地層や岩体が力を受けて変形し、湾曲した構造を褶曲と呼びます。